劇場版『キノの旅』病気の国 -For You- 考察④原作との違い

今回は、「映画にしかなかった箇所」、「原作の方が詳しい箇所」について、書いていきたいと思います。

 

ちなみに、原作は「キノの旅 5巻」の第10話。

映画と同じタイトル「病気の国 -For You-」です。

 

ストーリーと、全体の印象は、ほぼ同じ内容となっています。

これまで書いてきたように、コール中尉とのシーン、冒頭・ラストには大きな違いがありますが、話は変わっていません。

 (地下室・冒頭・ラストについては、こちら。 ↓ )

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                                                        (original photo: Free-Photos)

映画にしかなかった箇所

演出

「それまでのキノとエルメスの旅」について知らなくても、今回のストーリーを楽しめるように、工夫されていました。

入国前後の数分で、キノについて、自然と分かるような演出です。

本当は女の子であることや、

国々を巡っていること、

エルメスとの付き合いが長く、お互いに信頼しあっていることなど。

予備知識がなくても、映画中、「キノと、その生活」ばかりが気にならないような配慮がありました。

旅の目的

入国後2日目に、今回の国を、キノとエルメスが観光する様子が描かれていました。

「シティの果て」まで行ってみて、「かきわり(書割)」という方法が使われていると、キノが説明したり。

大道具の背景のように、シティを囲む壁に絵が描かれていたのです。

また、その付近の建物は、遠近法を利用して、街に奥行きがあるように見せる作りになっていました。

このような国が実際にあったら、本当にそういう造りをしているかもしれないな、と興味深く感じました。

また、シティでは、「消毒液みたいな、ツンとしたにおい」がすると、キノが言う箇所も。

国全体が、病院のような感じでしょうか。

映像からは、視覚的な情報しか得られないので、嗅覚の情報も加わると、臨場感がありますね。

そんな国の中で、キノは常に監視カメラで見張られていることに、なんとなく違和感を持っている、というのも、原作には書かれていないことです。

 

このように、キノの旅の目的である、訪れた国についての「キノによる気付き」は、映画で膨らませてありました。

映画を観ている側も、未知の国を旅しているような気持ちにさせてくれますね。

 

原作の方が詳しい箇所

開拓団

開拓団についてですが、映画では、「開拓団の制度自体が、人体実験のため」とも考えられるような表現でした。

原作を読むと、「シティの外で暮らす方法を模索していくための開拓団」というのが、元々あったことが分かります。

(病気の治療法を見つけるための)人体実験用に集められた人たちは、「特別開拓団」として区別されていることも。

また、この特別開拓団が、「本当に実験に利用されるかどうかは、直前まで確定していなかった」ということも詳しく書かれていて、コール中尉の苦悩がより理解できます。

映画の、カントリーを監視する事務所のシーンで、スクリーンには、穏やかに暮らしている家族が映し出されていました。

彼らは、ローグたちのように扱われることはない、「本当の開拓団だった」ということです。

 

イナーシャの魅力

この映画で印象深かったのは、イナーシャの「けなげさ」ですよね。

原作では、そんなイナーシャのひたむきさが、もっと感じられるようになっています。

キノとの会話が、映画よりも多ので。

これまで書いてきたように、

コール中尉は、イナーシャのために偽りの手紙を送り続けながら悩み、

キノは、自分の「旅の原則」を破ってまで、彼女の願いをかなえようとしました。

彼女が一生懸命で素敵な子だから、彼女を知った人は、夢を応援したくなってしまう。

そんなイナーシャの魅力が、この物語を動かしていることが、原作では、文章で表現されていると思います。

映画では、彼女の動きやしぐさ、息づかいも映像で描写されているので、十分伝わってきましたが。

  

鳥のブローチ

映画と原作では、作られた鳥の様子が違います。

原作では、短い「金色の毛」がはり付けられていました。

イナーシャの髪の毛ですね。

そして、原作の最後のページには、そのブローチのイラストがあります。

それが、とってもかわいらしいのです!!

映画では、とてもシンプルな作りになっていましたが、私は原作の「鳥のブローチ」の方が好きです。

この物語では、「鳥」が象徴的に出てきます。

「好きな所に自由に行けること」、それから、「そのように旅しているキノ」を表していると思うのですが…

この鳥のブローチは、イナーシャが鳥になったかのような姿なのです。

彼女はブローチに、「自分の心をローグの元に届ける」という気持ちを込めた、ということなのかもしれません。

ラストシーンの手紙を読んだ後、イナーシャが泣いてしまったのは、「この願いがかなったと感じたから」と、解釈することもできます。

イナーシャの純真さが伝わってくる、素敵なイラストは必見ですね!

 

(ラストの手紙については、こちらに書きました。 ↓ )

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最後に・・・私の好きなシーン

私は特に、イナーシャがローグと初めて会った時の様子を、演じるように話すシーンに惹かれました。

彼女は、その時のことを、自分の頭の中で何回も繰り返しているんじゃないかな、と、思わせるんです。

だから、ふたりのすべての「会話と動き」を、そのまま再現できるし、

「何も変えずに覚えていたい」という、強い気持ちがあるのではないか、と感じます。

 ローグとの出会いが、本当にうれしくて、大切な思い出となっていることが、伝わるシーンでした。

結局、イナーシャの夢はかなわなかったけれど、そんな素敵な思い出があること自体は、かけがえのないことなのです。

それが救いになっているのかもしれません。

 ちなみにこの箇所、映画と原作は、ほぼ同じです。

 

 

(「病気の国」の原作は、この本の中です。 ↓ )

( ↓ こちらのビジュアルノベルには、劇場版「病気の国」のDVDが付いています。)