30分弱の時間に、内容がぎゅっと詰まったこの短編映画。
結局どうなったのか、観る側に考えさせるラストとなっています。
私も、気になる点が幾つかありました。
1つは、キノが去った後、「イナーシャとコール中尉の関係がどうなったのか」。
注意事項
ちなみに、この映画に限らず、「キノの旅」の原作、アニメは、衝撃的な内容を含みます。
キャラクターはかわいらしいのですが、小学生には、おススメできません。
私は、弟が高校生の時に原作を貸してくれて、初めてキノを知りました。
高校生ならば、良さが分かるのかな?と思います。
でも、中学生は全員ダメとか、高校生ならば全員OKという問題でありません。
子供に見せたり読ませる場合には、大人がじっくりと調べて、子供の性質も考慮して、判断してもらいたいと思っています。
「キノの旅」が好きだからこそ、書かせてもらいました。
ここから本題です
イナーシャは、キノと会ったことで、
親にも内緒にしていたローグとの秘密を語り、
彼に贈り物を渡したいという願いを託しました。
コール中尉は、キノが来たことで、
ローグ宛ての心のこもった贈り物を受け取り、
誰にも言えなくて苦しんでいた秘密を、キノに打ち明けました。
この後、ふたりの状況に、変化はあったのでしょうか。
コール中尉が、ローグに代わって文通を続けた理由
そもそも、どうしてこのようなことになっていたのでしょうか?
原作では、キノと話している時に、コール中尉自身が、
「なんで返事なんて出してしまったんだ!」
と叫んでいます。
ローグが亡くなった後、彼になりすまして、イナーシャに手紙の返事を書き始めたことを、後悔しているのです。
映画では、「手紙を出さないでくれと書くべきだったんだ」と、言っています。
1回だけ、ローグからとして、「文通をやめたい」と書けばよかった、そうすれば、苦しみながら手紙を書き続けなくて済んだ、ということですね。
でも、コール中尉は、本人さえもはっきりとは分かっていない理由で、手紙を出し続けずにはいられなかったのです。
彼は、ローグが生きていたときから、ふたりの励ましあう関係を知っていたとのこと。
そして、イナーシャに惹かれ、彼女に元気になってもらいたい、という気持ちが強くなったようです。
原作では、人体実験について、「何より、彼女の明日のため」と言っています。
映画では、「何より、あの子を助けるために」。
ローグへの手紙を通して偶然知った、ひたむきなイナーシャを支えたくて、文通を続けたということでしょう。
もし、ローグからの手紙が来なくなったら、イナーシャは、つらい治療を続ける気力を失ってしまうかもしれないから。
彼女に心配をかけたくない、傷つけたくない、という気持ちもあったかもしれません。
いきなりプッツリと返事をやめると、イナーシャは、ローグの身を案じて、「なんとかしてあげないと!!」と行動を起こす可能性さえあります。
人一倍、気遣いも行動力もある女の子として描かれているので。
キノのような旅人に様子を見に行ってもらうとか…
それが無理なら、別の開拓団と連絡を取ろうとするとか…
イナーシャが苦心することになるのでは?
そして、真実を知り、傷つく可能性が高いのです。
ちなみに、「特別開拓団」に関する秘密が、シティの一般人にばれないように、というような意図は、全くありませんでした。
(もしそれが理由なら、上記の「なんで…」という発言や苦悩は無いので。)
一方、キノに対して、謝りながらも、命を奪おうとしたのは、この秘密を守るためなのでしょうが。
(キノが、イナーシャに真実を言うことは、いくらでも止められます。)
手紙を書いた人・その手紙の内容
キノがこの国を去ってから、イナーシャの元に届いた手紙。
原作では、「10日後」となっています。
これを書いたのは誰なのでしょうか。
原作では、「もしかしたらキノ?」という可能性もあります。
映画では、手紙の冒頭はイナーシャの声で、途中からコール中尉の声で読まれていました。
コール中尉が書いた、ということでしょう。
そもそも、コール中尉以外の誰も、差出人ローグ(または未記入)の手紙を、シティのイナーシャに届ける方法などないのです。
あの対峙の後、コール中尉も生きている、と分かります。
そして、私が1番気になったのは、この手紙の内容です。
映画では、イナーシャは、手紙を読んで、声を上げるほど泣いてしまっています。
それなので、「長い話をしよう…」の続きに、悲しいことが書かれていたのではないか??と。
原作では、この手紙を読んで、イナーシャは「泣き出しそうになって」と書かれています。
(泣いてはいない。)
また、手紙は、「長い話をしよう」で終わっていて、「長い話をしよう…」のように、続きを暗示するような余韻はありません。
手紙は、
「贈り物に対するお礼」
「元気になって、開拓村に来て」
「(会った時に)たくさん話そう」
の内容を伝える3文だけ、のようです。
イナーシャが泣きそうになったのは、贈り物を渡せたことへの喜びと、ローグに会いたい!という気持ちのためなのかもしれません。
気持ちが高ぶって、映画での反応のように、「泣いてしまう」ということもあるのかな?
(↓ 泣いてしまった理由については、こちらにもう少し書きました。)
文通のゆくえ
結局、この内容では、「今まで通り、文通を続けること」に、イナーシャは、何の疑問も持たないことになります。
原作では、この後も文通は続いた、と解釈するのが普通でしょう。
映画では、イナーシャの大泣きの様子から、手紙に続きがあり、文通は終わったという可能性も考えられますが…
ではもし、この手紙に続きがあったとしたら、どのような内容になるのでしょうか?
手紙の続き
ローグ宛ての贈り物に対してお礼を書いているので、ローグとして、コール中尉が書いたことになります。
文通を終わらせるために書くことで、イナーシャにとっては悲しい内容。
「好きな人ができた」という嘘の告白でしょうかね。
「同じ開拓者同士で、相手も自分を想ってくれている」とか。
気を落としたイナーシャが、治療をやめたりしないように、
「これからも君の幸せを願っている。僕たちのことも見守ってね。」
という言葉を添えて。
イナーシャから、「気にされないような相手になる」しかないと思うのです。
この内容の後なら、「しばらく手紙を書けない」と言われても、それを受け入れることになるでしょうし。
そして、独りよがりではないイナーシャなので、今後は「友達として」ローグに再会する日を目指して、闘病するという展開も期待できます。
変化
文通を続けたとしても、それは、これまでとは違うことになりそうです。
その兆しは、最後のお礼の手紙に表れています。
上記の短い3文の内容は、「コール中尉の気持ち」とも読めるので。
あえて自分のことを明かさずに、初めて自分からの手紙を書いたのではないかな、と感じました。
ローグになりすまして、彼が考えそうな内容を書くのではなくて。
もちろんイナーシャは、お礼の手紙も、ローグの言葉だと信じています。
(今までと同じように届いているし、ローグではないと書いていないので。)
そして、コール中尉は、そう受け取られることを望んでいます。
この後も、相手が代わったことには気付かれないように配慮しつつ、自分の気持ちを伝えていく、ということなのではないでしょうか。
そんな、希望のようなものが感じられました。
秘密を知ったキノの、「これ(贈り物)はあなた宛てです」という言葉。
ローグのために作られた物だけれど、受け取るのはコール中尉だと断言していました。
かつてはローグだったけれど、その後はあなたがイナーシャを支えている、という意味ですよね。
キノとの出会いがきっかけとなり、コール中尉の中で、変化が起きたと考えてもよいのではないでしょうか?
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